恋愛遊戯/渡 ひろこ
「貴女はご自分に酔っていらっしゃるのです」
思いがけない言葉に顔を上げた
彼は静かに私を見つめて煙草に火をつけた
(どういうこと?)
いぶかしげな眼差しの私に彼はこう言った
「貴女は恋をしていると錯覚している
ご自身に酔っているのです
僕との関係はまやかしにしか過ぎない
これ以上深みにはまると遊びが遊びでなくなる
ご自分を追いつめることになりますよ」
ゆっくりと吐き出す紫煙に
少し目をしばたたせながら
彼は私の言葉を待っている
目の前に置かれているコーヒーは
とっくに冷めきっていた
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