見張り塔から/塔野夏子
 
この過剰なしかし稀薄な世界たちの中で
見張り塔から
いったい誰が何を見ている?
何が見えていても無駄かもしれない
かたちの無い革命もどきが
気づくと僕らの意識を下から暗く蝕んでいる
そんな気がしてしまう
どんな多義的なゆらめきに満ちた暗示も
あっけなく薄っぺらな断面に変え増幅してしまう装置が
僕らの意思の届かないところで
いつからかとめどなく稼働しつづけている

ここからでは何もかもよく見えない
ただ旗のまわりを黒い鳥たちが群れ飛んでいる

過剰なしかし稀薄な世界たちに囲まれて
見張り塔から
いったい今誰が何を見ている?
増幅装置の生み出すひどいノイズのせいで
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