あの子/乾 加津也
 
またあの子
そうか 小学校が休みだから

女の子はもじもじしている
暑い昼に お母さんと道で弁当なんてという顔をしている
頬に浮かぶその汗を無理やり拭いている
わたしが来ても顔色一つ変えない

彼女はお金の受け渡し係ではない
だが 母が添えのスープを入れているうち
わたしはお代を彼女のちいさな手に渡してみた
彼女はお金を受け取るとすぐさま小銭のトレーにいれて
ひろげたビニールにわたしの弁当を入れようとする
うまく入らないのですぐに母がかわって入れる

弁当をもらって立ち去った でも
ちゃんと聞こえたよ
「ありがとうございました」
彼女の
笑うような声もかさねて

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