遠いお話を/霜天
 
遠いお話を
忘れないために
僕等は
指を折りながら
花の咲くのを待っている


寝返りの度に
蒸発してしまう夢を
朝のそばで
取り戻そうとしている


見つからないままでいる
かくれんぼの結末
過ぎるだけの時計の中では
つかめないまま
遥かな国から、の

遠いお話


どこか遠くの空で銃声が響くと
自由が一つだけ、ゆっくりと倒れた
砂の街では、崩れ落ちていく
ひとつひとつ、重みが
積み上がっている
遥かな国から
届く音は響かず
遥かな国から
届く声も無く
遥かな国から、遥かな国へと
伝わる空は、ただ青く


蒸発していく夢は、かくれんぼの途中で行方不明で
僕等は、遠く、遥か遥かの空で
蒸発して昇っていく夢を
遠いお話に、組み立てながら
花が咲くのを
ここで待っている
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