遠いものたちが/岡部淳太郎
 
遠いものたちが
ばらばらになって
散らばり
それぞれに互いがわからなくなると
世界はいったん
完成されたような
そぶりを見せる
燃えたあとの灰のように
のこったまま
離れを保って
短い呼吸を繰り返す
遠いものたち
それだけで自足しているような
ふるまいを見せているものの
中身の詰まった缶が
開けられるような音が
ふいに響きわたると
隠されていた未踏の
郷愁が解き放たれる
この風景は
離れを引き寄せ
葉に梢を
川に海を
人に霊を
思い起こさせる
これらばらばらに
のこされたものたちに
淋しさを問えば
世界は壊れて
同じようにばらばらに
散ら
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