人々の日/山中 烏流
う行為自体を
美しく思えてしまうので
そんなひとが増えた近頃は
みんな、薄皮を顔に貼って歩いています
お互いに剥がしあいながら会話をして
次の日には、また綺麗な皮を貼り付けています
痛そうですね、と言えば
お互い様ね、と返されるので
わたしには
何も言う権利がありません
誰にも
そんな権利はありません
どこかのだれかが
「ひとは最初から死ぬために生まれてくる」
と言って
少し大きめの団地から、飛び降りました
野次馬とお茶の間を、ほんの少し喜ばせることが
そのひとの望みだったようです
そして
望みは叶ったようです
近くに住む、顔見知りのお婆さんから
銀杏を貰います
調理法を知らないし
何より、わたしは銀杏が苦手だけれど貰います
台所に放置したので
一週間後が楽しみです
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