夢万夜/木屋 亞万
 
うにやさしく一体化する
快楽で
水分が飽和を通り越して
はち切れんばかりに注がれて
躍動する
内側からの押さえられない漲り
それがドッと吐き出される爽やかな心地
夢で
現実よりも強い感情に包まれて世界を見る
そこから醒めたときの
終わってしまったという感情は
生涯で最も愛した物語が終わってしまうときよりも
はるかにさびしい
置き去りにされた
気持ち

秋は
感性が感情を次から次から産み出している
それは現実をすぐに凌駕し
瞬く間に嘘を量産する
夢の中で
この小さな閉じられた頭のなかで
それはフラスコみたいなものだ
化学反応が期待される液体を溜めておく容器
そしてそこに時おり栓をしてチューブを突き刺す
何も煮えていないのに液体と固体はグラグラと泡立って
それは恐らく酸を帯びている

目が開いたときには過ぎ去っている
反応しきった物質のなかに残滓を求めて
もう一度目を閉じてみても
覚醒し始めた今が夢見ることを許してはくれない
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