夢万夜/木屋 亞万
 
あれはフラスコみたいなものだった
化学反応が期待される液体を溜めておく容器
そしてそこに時おり栓をしてチューブを突き刺す
煮えてもいないのに液体と固体はグラグラと泡立って
それは恐らく酸を帯びている

今日は雨が降るらしい
一万年後の今日はここで雪が降ると断言しよう
そして角の生えた黒い獣が
赤い羽根が散乱するなかで
軟い肉を食んでいることだろう
息は白く雪も白くその生き物の羽も白かった
獣も皮一枚剥けば赤く
血を抜けば白い繊維でできている

それはおそらく驚いているだけなのだ
なぜ自分はここにいるかという驚きが
解決されないまま
よく考えることもできず
体の
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