カナリヤ/ホロウ・シカエルボク
脳漿の絨毯の上を
俺は歩いていた
それが誰のものなのか
なるべく考えないようにした
靴の底の感触は
あまりなかった
ただ
ときどき
ところどころ凝固したジャムのようなものが
ぞくぞくと心底の
震えを呼び起こした
その道がいつ終わるのか
俺には分からなかった
だが
しかし
先に歩かなければ
ずっと脳漿の上に
立ちつくしていなくてはならないのだ
臭いはなかった
なにも―不思議なことに
なにも臭いはなかった
けれど
偽物だと安堵するには
鮮やか過ぎる光景で…
遮光越しに見るような太陽が
そっけない光を注いでいた
あたりに
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