Actias artemis/黒い翼
重陽の蔵出しの美酒を酌み交わせ
この吟醸香
この酸味
この甘味
5人のミューズたちには
エメラルドの翅を与えよ
夜半には雨になるって
ならばあのブナ林まで飛ぼう
あの立ち枯れた樹々の
発光体に集まれ
俺たちは月の子
光の胞子を高みから撒き散らし
すべての肺を支配しよう
すべてが エメラルドに見えるかい
暗闇で エメラルドに光れるかい
カラマツの林で
イカリモンガが舞うならば
シラカンバの林で
アサギマダラが舞うならば
ミヤマウズラの群落で
ウスタビガが舞うならば
ムベの茂みで
アケビコノハが舞うならば
ドクベニタケの笠の上
妖精たちの小さなキスが
この中秋の夜の世界の
ありうるべき理となろう
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