レモン色のチューリップが/乾 加津也
 
えていたいのでした 実は
あなたの色が赤ではなかったようにぼくも自分のかたどりを受け入れるのだと
それは雨天のせせらぎなので
退廃の ちいさな痒みです
「塵に帰る」の預言からいったい
いくつのレモンが朽ちたのでしょう
あなたへの晦渋(てがみ)
いい残したことづて
色彩レモンがかなしみの誘いなのですと
幼いぼくは泣きじゃくりました
素直に はい と
(いいえ けっして)
そしてこのように雨だったと思います
それは雨天のせせらぎであって
あなたの終焉
しっかり 見とどけ 雲間の迷彩
ぼくは傘など開いたままで

ウサギ小屋
メリーゴーランド
あなたはそんなところで 赤く黙って
水玉に突っ伏せる姿勢があなたの母たちで
雨を呑むために手を上げるのもそうです

そこ
チューリップはレモン色をして
そんな雨のなかを
せせらいでいました

 それからのぼくはもう

ぬれることもできず
靴を
傘を
せせらぎのゆくえも憶いだせないまま
レモン色の
あなたを
翳だけかかえて
沈みつづけているのです

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