社宅の記憶/森の猫
 
ちを陰で罵り
息子の障害を蔑んだ

すごい節約家で
”マンションを買い 社宅を出る”
のが 口癖の女

相方と年の差のない
女の連れ合いは
いつまでも 昇格せぬ営業マン

何もかもが 気に入らなかったのだろう

夢の中で
女はあたしに カミソリを送りつけ
暴言の数々をぶつける

あたしも負けずに
大声で言い返していた

なのに 苦しい
ひとを 蔑むことに
慣れないあたしは
その言葉に傷つく

黒猫が橋から
落ちてゆく

自分の叫び声で
目が覚めた

脂汗をかいている

もう 今はない
社宅

悪夢の暗示
今の苦しみ
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