夏よ、私を赦してくれ/うめぜき
 


胸の奥深く
茂みになったその向こう
木々、そのこもれびに
獣が棲んでいる
愛した女に、泣きながら、喰らいつき
肉を引き裂く
したたる血に、自身が切りつけられながら
喰らい、泣く

 ※

その時
雨が降り出した
夏の余韻を粒に押し込めて
一斉に 包み込むように
ざあざあと音を立てて
この肉体を

 ※

雨音が満ちる
深い森の奥にも響き渡る
獣は静かに鳴いている
口を開き、天に向けた
血の余韻は、消えない
愛した女の
微笑の余韻も

 ※

私は 泣いている 穏やかに 
体中が雨音で満ちている
その調べに 身をたゆたう
すべてが
少しずつ移ろっていく

 ※

祈るばかり
祈るばかりだ
時が過ぎ去っていくのと
愛した女が永遠に結び続けていくこと
とを





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