疾走/佐藤伊織
石を投げつけたんだね。もう一度、同じ石を投げたんだ。目標となる的なんてありふれたものだから、何も作りだしたりはしてないんだ。僕の身体の一部がもげてそこから足が生えて、その足で歩いていくんだ、僕は上下逆さまになった欠片になってその辺を漂っていたよ。
石を投げたいね、もう一度、身体をくの字に曲げてさ。僕は投げた石のマッ逆さまに倒れて、そこは一面のガラクタで、風が吹いた一万年も未来の世界に吹っ飛ばされて、(もうみつかりはしないんだ。)もう、ここは一万年も未来なのだから。もう、ここはどこにもない明日だったから。
戻る 編 削 Point(2)