秋の地図/岡部淳太郎
 
燃えたあとには
かわいた灰だけがのこる

開いた森に
自らに似たものが
点々と横たわり
その足跡のようなくぼみの
ひとつ、ひとつ、に
降りつもるものがある

それらがどのように
つもっているか
あるいは閉じられた街路に
つもる間もなく
吹き払われ
どこに向かってまた
落ちようとするのか

それらを記した
秋の地図

その折り目に沿って
正しく歩く
降りつもるものたちもまた正しく
降りつもり
ひとつ、ひとつ、が
寒くなってゆく

何かが終ったあとの
はるかな先触れであることを
静かに語るこれらの
降りつもるものたちよ
ばらばらに離れた
いのちのような弱さで
この地図の上に
横たわる

それらもまた
自らに似たもの
開ききっても
読む者はなく
いまはただ

燃えたあとの
かわいた灰として



(二〇一〇年一月)
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