轆轤肉のクロニクル/人間
コロの枯葉積む万年床に割れる採算
浜茄子を通行人に供えけり掻爬の手付きで混ぜる鳴き砂
雨垂れが逆さ茶を摘む鮫肌にペロブスカイトの懐刀
【余肉後期】
交番の片隅に肉の襦袢が干してある。
標本の独壇でテナガコガネが膝を打つ。
白濁の花曇りビザンチン柄の雪が降る。
赤んぼのうわ言で絶版される広辞苑。
擬宝珠の技法書は草の息の根止まらない。
まるめろの薄皮に暮らす家族は風邪を引く。
蟻を追い海を越え白華煉瓦の塀高く。
【終肉期】
終わりの日、五臓六腑抜作は濁り目を暦にして捲った。
右耳では椰子蟹カタツツが安売の寓話を語りつつ、
左耳では蚯蚓ウラヅが裏拍子を打ちつつ、
両耳で代わる代わる笑う、
眺め長ら目の回る抜作は差詰轆轤肉の如く、
此んな馬鹿気た仕打ちは運去りと思う間に間に聞いた、
左右の完全八部音程違え「憚様」の慰労が軋む。
「憚様」
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