空は音符の匂い/昼寝ヒルズ
木が勢いよく枝をひろげ
葉がさらさらと風にそよいでいる
ココがわたしの入口です
日に焼けた古本の匂いが
若き父のひたむきさをつれてくる
ココがわたしの入口です
決して命乞いをしなかった食材を
冷蔵庫からゴミ箱へ捨てる
ココがわたしの入口です
入口はどこにでもある
わたしの入口は
あきれるほど未熟でひび割れだ
しかし入口を開ければ
少しだけ遠くの空が見えてくる
風にまかせて深呼吸すれば
空は音符の匂い
いつか出口が
すべての入口を支える
うたになりますように
あきらめなかったメロディが
枯渇した入口に降りますように
ココがわたしの入口です
出口は思いもよらない空に
つながっている
今この瞬間は
ひび割れていても
生きるための鼓動
音階を上下する
胸にまかせて深呼吸すれば
空は音符の匂い
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