洗骨/楽恵
早くに迎えに来たかったさぁ
私たちがあずかり知らない事情がそれを拒んでいたから
おまえは立派な亀甲墓にも入れずに
この島の地形のどこかに崩れ行方不明になっていた
すでに雨が手を伸ばして
残されたおまえの欠片をまさぐっていた
同じように私たちもおまえの骨を洗いはじめる
ごめんね、
骨を洗ってあげるね
犬や猫とは違う
人間であることの証し
肉や血の跡がすっかり流されていく
雨が上がったあと
私は
気がつくと道を失い家族とも生き別れていた
迷子になってしまったさぁ
帰り道を忘れてしまっても
大丈夫
今度は彼らが私の骨を洗いに来るだろう
私はここにいます
*註
「グマアミグヮー 」 方言で霧雨を意味する。
「厨子甕 」骨壷のこと。
「マブイ 」方言で魂を意味する。
「米占い」米を掌の上に載せて占う。沖縄で盛んな占いの方法。
「洗骨」洗骨は死者の骨を海水や酒で洗い埋葬する、かつて沖縄で行われていた葬制のひとつである。
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