割烹着/板谷みきょう
 
おばさんと話していたんだ

学校から帰ってきて
お下がりのランドセルを片付けて
それで、どうしたんだろう
それから、どうなったんだろう

理由はもう覚えてないけれども

ほんのさささいなことで
まほうびんをわってしまった

今となってはもう
長屋も
共同の井戸も
手押しの水汲みポンプも
ないけれども

枯れそうな想いで
心が渇き切った時に
母の白い割烹着を着ていた姿と共に

ほれほれ、さぁさ。
みきょー。がんばれ。

ほんのさささいなことで
まほうびんをわってしまったけれど
今では、そんな声が聞こえる
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