割烹着/板谷みきょう
おばさんと話していたんだ
学校から帰ってきて
お下がりのランドセルを片付けて
それで、どうしたんだろう
それから、どうなったんだろう
理由はもう覚えてないけれども
ほんのさささいなことで
まほうびんをわってしまった
今となってはもう
長屋も
共同の井戸も
手押しの水汲みポンプも
ないけれども
枯れそうな想いで
心が渇き切った時に
母の白い割烹着を着ていた姿と共に
ほれほれ、さぁさ。
みきょー。がんばれ。
ほんのさささいなことで
まほうびんをわってしまったけれど
今では、そんな声が聞こえる
戻る 編 削 Point(3)