直線 9/11/夏嶋 真子
 

人間を強いられている

老いて節くれだった手が
不規則な稜線を描いて
魂を掴もうとするのに
決して撓むことのない直線の前で
私は身を隠せずに
国籍の刻印された
十字架に掛けられている


*


海を空を風を断絶する
直立の直線が
文明の存在を
高らかに宣言する
踏みつける者たちと
踏みにじられる者たちは
互いの顔を知らない


*


幻視の鳥が飛ぶ
((さようなら、みなさん))
今やその時だ
幾億の光線に貫かれた
この亡骸を
鳥よ
鳥よ
魂の曲線に沿わせ
空へと抱いておくれ
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