ふあんな街は犀の背中にのっている/石川敬大
 
この街はいっけん堅労である
 獰猛な自然からコンクリート人工物で護られている
 樹木や雲みたくにはうろつきまわらない
 夏の暑さにもどこへも逃げていかなかったほどには忍耐力もある
 でも
 ときどきの
 グァラングァラン
 小刻みなユッサユッサの
 この大地の脈動はどうしたことだろう

     *

 ぼくは妄そうする
 絵画のなかで静止したオタマジャクシが
 ふたたび蠢きはじめたのだと
 プランニングしたデザイナーはもういないけれど
 オタマジャクシは街の地下にいて蛙になる日をまっている
 あるいは
 鎧におおわれた
 この街を背にのせた犀を追いたてていると





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