アンバランス/nonya
平日は
ぎっしりと湿った砂が詰まった頭に
素敵な大人のお面をつけて
行列の最後尾で傾きながら
特別快速の通過を待っている
休日は
いっこうに衰えない逃げ足に
穏やかな家庭人のジャージをはかせて
地上デジタル波の端で傾きながら
アナログなTVの嘘を聞き流している
ときどき
傾いていることが無性に嫌になって
手探りで真ん中を探してしまう
喜怒哀楽の遠心力に逆らって
揺るがない自分を求めてしまうけれど
なかなか
真ん中が見つからなくて
自分の夕暮れの中で途方に暮れる
見つかるはずなどないのだ
自分の空洞の広ささえ知らないのだから
本当は
僅か
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