九月は誰もが遠ざかる/みぞるる
 
やさしい気持ちは
赤子のむせび泣くそれに
似ているかもしれない

なにがやさしさなのか
わからなくなることがある

ただ強く抱きしめるだけのうそも
飴をひとつぶあげる掌も
好きという言葉にこたえつづけることも

ちょっとずるくならなきゃ
積み上げてきたものは
がたがた無残に崩れ落ちるね

ほんとうにやさしい人は
どこにもいない

でもみんな
ことごとく
悲しくなるほど
やさしい


なにもかも
そこから来ていると思うこともある

吹きぬける空の青さも
シャッターを切る音のせつなさも
振り返るときの風に揺れる後ろ髪も

ちょっと一人ぼっちにならなきゃ
スクリーンはなにも映してくれない


だからやさしい気持ちは
赤子のむせび泣くそれに
どことなく似ている



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