プライヴェート・エンド/佐々宝砂
それはわかってる
明日は温かい部屋に戻ろう
でも 一晩だけ この誰もいない森で
精神というやつを再構築しておきたい
痛みも恐れももう心を苦しめない
なくしたものは一人称代名詞に過ぎない
きみを愛することもできるだろう
でも きみは こんなところに来てはいけない
きみはやわらかくてやさしいのだから
こんな汚れた身体からは遠ざかるべきだ
螺旋が胴体を取り巻く
連綿と続く鎖が腕をいましめる
どろどろの赤黒い塊が脚にまとわりつく
死ぬことを知らぬ血みどろのママが微笑む
そして ついに 屈服する
わたしは女だ
これでお気に召すのかい
くそったれのママ
もうすぐ夜が明ける
わたしは顔が洗いたい
どうやら生きてゆかねばならないらしいので
This is private
そして 世界は続く
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