鞴のオルガン/プル式
 
の入らない脚と
既に水気が消えて粘る汗
全てを吸い込んだのだろう
布団に手をやるとジワっと影を吐き出した

僕は不快感を抱えて再び眠る
吐き出した影を体に吸い込む事で
カラカラの渇きが満たされて行く
そしてもう一度
何十年も繰り返される夢を見る

僕はクルクルと回りながら大声で歌う
汗と影と光りと夜の中で呼吸が出来ない
汗だくになりながら目が覚めると
時計は昼をさしている
窓の外からは幼稚園のオルガンが聞こえている

体の節が錆び付いた様に音を立てる
流しまで這いずる様に進み水も飲まず持たれかかる
虚ろに見上げる電灯には外の光が映る
ぼんやりとその影を眺めながら
置き去られたオルガンの事を考える
鳴らない一音をの事を考える

昔家には鞴のオルガンがあった
丸く柔らかな音のするオルガンだった
季節はいつでも初夏で
僕らはいつだって楽しそうだった
そこには確かに幸せがあった。

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