鞴のオルガン/プル式
半音の半分くらいズレていたと思う
そのオルガンを初めて見たとき
音の鳴らし方が分からなかった
ようやっと曲が弾ける様になった頃
引越した先にオルガンは無かった
あれは楽しい音だった
未だに記憶の中でファフファフと鳴る
前後運動の様にペダルを踏む弟
真似して踊る僕と影
それは間違いなく幸せの形
滲み出した汗の様な日常は塩っぱくも
布団に逃げ込む頃にはいつだってわらえた
影は夜の中で呼吸が出来ないから
だからそこにあるのは光り
僕は安心して夜に踊る
耳にはオルガンが聞こえている
クルクルと回りながら高らかに大声で歌う
僕は目を覚ます
痙攣の後の様に力の入
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