日向のころ/豊島ケイトウ
 
る鐘の鳴る朝――そう、わたしは朝を求めていた

(静寂の気配……)

     *

まず指先から剥がれてゆけば二人ともだいじょうぶ、近いうちにちゃんとしたかたちで別れられるでしょう――わたしは云う
なぜこうもヒトはヒトに近づきたがるのだろう――あなたは云う
たとえば自分の心が欠けていたとするとどうしてもその穴を埋めたくなる――わたしは云う
でもその穴に合うかたちを所有しているヒトはごくわずかだ――あなたは云う
それでもわたしたちは恋というかたちだったり、あるいは師弟というかたちだったり、いろいろと惹かれ合うのだと思う――わたしは云う
師弟?――と、あなたは笑った
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