星を見る人/岡部淳太郎
僕たちは見ていた
星を
夜の
空の
それぞれの 星を
見ることで
何かが晴れ渡るわけではないけれど
僕たちは星を見ていた
夜の暗さのどこにも
それぞれの気持ちを投影する場所はなく
だからその隙間で頼りなく光る
いくつもの星に
僕たちは目を凝らした
後ろのどこかの森の中から
梟が鳴いた
口笛のようなその声は
何を告げるのでもなく ただ
夜の深い空気の中へと吸いこまれ
僕たちは
それを聞いたふうをよそおって
また頭上の
星を見上げた
けれども僕たちが
見ているのはほんの
いちぶぶんでしかなくて
宇宙のむすうに
ほんの少しでもふれる
[次のページ]
戻る 編 削 Point(9)