ミニミニおやじのミニな終焉/salco
 
その頃、同居の孫達も大きくなったので、
手狭になった家を取り壊し
立派な三階建に新築したけれども、
敷地の関係もあり、やはり小ぶりな家で
息子も嫁も並のガタイだものだから若干
肩身をすぼめて生活しなければならなかった
ミニミニおやじは
その家の一番小さな和室に起居して
黙って食卓に就いて黙って朝食を摂り
黙って朝刊に目を通すと黙って運転手の迎えを受け
会長になっても変わらず毎日出勤して行った
向かい合わせのだだっ広い後部座席にちんまり座って
サスペンションは良いものの
深い座面から床に届かぬ足をぷらぷらと
居心地悪さを小さな身体にじっと折り畳み
本社の車寄せで運転手がドアを開けるまで
身じろぎもしなかった
それから知らない間に膵臓癌で更に萎靡し
それでやっと先日、
並の背丈の奥さんの元へ旅立った
密葬だった
社葬は別途、会長規模で執り行なわれたが
近所に知遇とてなく、長生きしたので生まれた星に
旧友や同僚も残っておらず、ミニミニおやじ
心おきなく旅立った
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