路地の歌/
木立 悟
夕べをすぎる生きものを見る
赤い山羊の帽子には
赤い枝がささっていて
ざわめく子らをたしなめている
渦まきをつついてはいけないと
窓の奥から見つめられて
二人は速く歩くので
通るものはみな気づかない
高く重なる木の家が
立ちならぶ路地の水たまり
二人の影は二人のまま
ひとつになっても二人のまま
障子に歌留多に扇子に畳
壁に残る雨の跡
暗い緑の針仕事
枝と空には子らの声
鳥の路に上下する
裏の路に上下する
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