炎のドレス/薬堂氷太
 
「不自由になるの」

そう笑った 君は
僕と目も合ってないし 苦笑いだった

「期待していいのかな?」

そう考えた 僕は
友人のことを思い出して 今の言葉を取り消した

「ピアノの余興、楽しみね」

そう言った 君の
風になびく髪が奏でる音色に 僕は嫉妬した

「君の好きな曲だよ」

そう零(こぼ)した 僕の
頭上に神様が唾を吐いた もうとっくに諦めてるクセに

と、言うより


最初から何もしてないだけであってただ日々燻ぶって煙たくなってゆく僕の体内を焚きつけるような眩しい友人の笑顔をたまに憎らしく思ったりそんなことが過(よ)ぎる自分の
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