月夜も欠けぬ時を見つめ/北星三天
 
ミルクに近い月の光り
アイス珈琲に混ぜた夜

深夜放送に明け暮れた
忘れたはずの夜の落し物

風からまる腕で抱きしめていた


倒した知恵の杖
指す道を倒れながら倒れながら

あの時君に話したはずの御伽噺

あの時君に渡したはずの夢物語

今も風からまる腕で抱きしめている


たまに無性に泣いているのは

悲しいからではないからで

見世物でないやさしさに刺されただけの夢物語

先生が話す人生の御伽噺
笑うことでしか解ることもことも無く
君と手を繋ぐだけで虚空を見つめた

今宵も朝に近く
今宵も夜に近く

誰に話すことも無いミルクに近い月の灯り

飲み干せば眠るように夢を拾い
拾えば眠るように奏で飲み干している

おるごおるは蓋の開いたまま
今宵もあの頃と変らないまま



月夜も欠けぬ音色を



織り続けているんだよ
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