碧い七里ヶ浜/Akari Chika
 
凍える体を暖めてくれる
そんな 一杯のコーヒーにもなれない僕は
冷え切った君の手をさする
どうにかして
暖めてあげられないかと

癒されない痛みがあることを知る
閉じては開く 傷跡があることを

春雨の降る
七里ヶ浜の駅 プラットホーム
低いベンチに腰掛けて
僕は途方に暮れていた

君はただ
さっきまで側にあった海を
物欲しそうに見つめている
砂浜に打ち上げられた
碧い空きビンのように

必要なのは治療なのか
叱咤なのか
手を引いて歩くことなのか

その心に明かりを灯したいのに
火の分け方がわからなくて
その心を風の通る草原に連れて行きたいのに
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