Under the blanket/Akari Chika
“本当の私なんていない”
切り分けた
グレープフルーツを
かじりながら
ふと思う
Who am I?
キッチンの小さな窓から
果てしない世界が見える
すこし肌寒いこころも
傾いた夕陽が
毛布を掛けて
暖めてくれる
香り立つのは
黄金(こがね)の稲穂
くるみが
砕け散った机
桃の色した頬乗せて
滑らせる
ひんやりと
知らん顔の風
夏はもう
何処かへ
Who knows?
鼻先くすぐる
ブラック・ペッパー
頭をかすめた
フラッシュ・バック
気づけば
幾層も
重なった
季節
星で埋められて
始まっていく
夜空は
とてもとても大きな
終わりのない
毛布
かさぶたの剥がれた
意識に
ふかくまで浸透する
優しさ
同じ毛布にくるまりながら
ぬくもり探して生きている
“本当の私なんていない”
切り分けた
アップルパイを
見つめながら
ふと思う
それならば
Who am I?
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