夜の鉄塔に
不意に生える街
怯える目を
置き去りにして
黒々と
増える
天辺から
樹が生えたかと思うと
それも鉄の塊
夜が音を立てて吼えた
音にならなかった
だが
闇は切り裂かれた
そこからも
生えそろう街
どの街も
酸化している
目を凝らし
その姿を見つめ
煙草に火をともす
煙がにょろにょろと伸びて
吸い込まれていく
以前どこかで読んだ
水没した遺跡のことを
考え
街
街
街
ここにある街の隙間に
夜だけ生えてくる街
目を凝らすとぼんやりと浮かび
硬く硬く
存在をあらわにする街
水がひび割れる
空気が濁る
体温が上昇するかのようだ
街
酸化して
遺物になったもう一つの街の断片
花開き
静物の装いを
徹底しながら
強い感情で
そそり立つ街
崩れ去らないか?
崩れ去らないのか?
問いかける私を尻目に
動かない
もう一つの街
夜の鉄塔に
不意に生える街
怯える目を
置き去りにして
黒々と
増える