指先の向こうには/AB(なかほど)
 
界で
だれかが押している
僕が指さすほうへ
指さすほうへ
指さすほうへ
押している
ケッ
と鳴いて
獏は帰ろうとする
喰えたもんじゃないってことは
まだ見ることができるんだろう

僕の指さすほうへ
進む世界には
君も押してくれた
指先の向こうには
まだ消えていないんだろう

ねえ
律儀にも獏は
側に寄ってきて
障子紙の穴 塞ぎ じろり
獏の指先は君の指先のように
白くなって



  五

あの飛行機はどこに行く の


見上げたままで答えた母


同じ空    (遠いはずなのに)
同じ雲

手を引いた子に



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