蝶/Oz
 
紫色に染まった悲しみ
ポツンと雫となり
水面に波紋を呼ぶ
浮かび上がる静寂に
ハッと
まるでハンマーで
後頭部を殴られたような
衝撃を受ける

それは
麦わら畑の真ん中で
青空の限界を
感じた時に見た
あの幻の蝶の話
幅3m程のその
蝶は





と色を変え、
その空を
浮遊するような
あるいは
瞬きの瞬間毎に
居場所を変えるような
(その狭間を私は見極めることができない)

その色の上に
ポツポツと
新たな色の斑点が
生じ
それが侵食するように
広がっては
また新たな斑点が

その終わりは?
覚えていない
終わりはあるいは無かったのかも
その景色はもしかしたら
嘘なのかも
ただ、
記憶として
それは頭の中に
刻まれている

手を差し出すと
手首の辺りから
切り落とされる
コッチと
アッチには
境界線があって
ソコを越えることは
可能性と言う言葉の
存在を
容易に拒絶する

私は痛みも感じずに
ただ蝶の存在のみを
強く抱き締めて
踞る
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