残していくきみへ/寒雪
い不安がぼくの体を刺し貫く
ありきたりだけど
きみを思わず抱きしめずにはいられなかった
同時に
タイミングを合わせたかのような涙が
ひとすじ
またひとすじ
たぶん
きみは忘れていくのだろう
ぼくときみが暮らした日々を
交わした言葉を
積み上げた思い出を
でも
ぼくはその性質に抗ってみる
脳みその記憶ではなく
体全体に
ぼくの存在を刻み込んでみる
これから死ぬまで
出来る限り
時間の許す限り
きみを抱きしめる
ぼくのぬくもりを
ぼくが冷たくなってしまった後に
何気ない仕草の折に思い出して
暖かい気持ちになってくれるよう
ぼくは懸命に
きみを抱きしめる
きみがぼくのぬくもりを思い出すたび
ぼくはきみのそばにいてあげる
ぼくがきみに注いでいた
純真無垢な愛情を
きみの体一杯に感じさせてあげる
だから
きみは胸を張って生きていってほしい
それがぼくの最後の願いだ
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