線たち/
たもつ
深い霧は晴れ
街やヒトを形づくる
様々な線たちが
再び姿を現す
言葉は辞書の中で
既に朽ち果てている
「幸せ」という
一語の印字のみを残して
鳴くこともなく
路上に何となくカラスがいる
鳴き方を忘れてしまったのか
それともカラスは鳴く生物である
ということが
わたしの事実誤認であるのか
確かめようとしても
どこにも見当たらないのだ
わたしだけが
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