一握りの砂時計/鈴木 西瓜
口の端が自然と上がり、口の周りから気泡がぐるぐる海面へ
ある想いを瞼の裏に隠したら、
このまま、さぁ、目をつぶってあるきだす
幻想のゲームをおもいつき、途中で海底の砂を手につかむ
砂浜にあがったときにどれほどのこっているだろう
握り締めれば、締めるほど上手に砂は手から逃げてゆく
指のすき間からシャラシャラとこぼれゆく
水面の階段をたしなみつつくだる
砂浜にあがった時に手のひらに残っていた砂をなんと呼ぼうか
経験というには少なすぎる
思い出というほど、むさくるしくもない
ともあれ、僕は一秒にも見たない砂時計を手に入れた
砂浜にたどりつくことができたなら、
君に電話をしよう
(ワガママいえば、すぐに返事して欲しい
どうやら、僕にはあまり時間がないらしいから)
一秒にもみたないこの砂粒達にお似合いの、一秒にも満たない祈りを込める
幾百、幾千の言葉ぐらいは出てくるだろう
その言葉たちを君が抱きしめたとき
言葉が一粒でも残れば、僕は海から出てきた時のように
口の端をあげて、にこり、と笑うだろう
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