分解するのが男の子、解剖するのが女の子/手乗川文鳥
 
雲は蛍光灯の点
滅、つけたりけしたりしたら、怒られるから注意してあげなくち
ゃいけない、終わりの会で言わなくては、先生、放課後男子が電
気で遊んでいました。



塾にいきたくないこどもばかりが集まる公園で、張りつめたボー
ルがとんで、やがて巨大な男の子と巨大な女の子のベッドが生ま
れた、果物が熟して、誰も摘み取らないまま落ちて、踏みつぶさ
れていて、わたしたちはそれをとても恐れた。



へてへても、へても、へてへてもへても、それだけで完成される
会話を交わした、発生して間もない女の子と、発生してぶつぶつ
だらけのわたしと、このまま密林で甘く熟していけばいい、蹂躙
を経て経ても経ても。



男は電動ドライバーを、わたしは俎板を欲しがった、自由になる
ものの、少なさと小ささが、時を経たわたしたちが得た全て、こ
んな狭いところに全てがあって、軒下まで伸びたドクダミの根を
抜いてその長さに二人で驚き笑う日曜の午后。




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