音のない洞窟/吉岡ペペロ
 
たような気がする

寝起きのぼんやりとした思考のなかで

ヨシミという海、

そっと声にださずにつぶやいてみた
まだ寝ようとしたら眠れそうだった
そとの夜明けのひかりが月影のようにカーテンを染めていた

オレにとって、陸上生活ってなんなんだろう、

シンゴは無性にタバコが吸いたくなった
家では吸ってないことになっているからそれはできなかった
イガタアヤコとメールでセックスしたことを思い出していた
ヨシミの顔を思い出していた
それはずいぶん久しぶりのことのような気がした

シンゴはじぶんがいまいる場所が、時間が、陸上生活にほかならないと思った
なのに海に背泳ぎみたいにして浮かんでいた






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