石灰華/Akari Chika
ゆっくり溶けていく
わたしのからだを するりすり抜けて
なまぬるい温水のなか
ふつふつと 哀しみが込みあげる
広がる波紋 透けた泉の底に
あの日とは違うわたしがいる
豊かな水草にからまった
ふくらはぎのにぶい痛みは
癒えることなく 日に日に増してくる
もう一度 もう二度と
終わりのこない朝のために祈ろう
寄せては返す蒸気のかたまり
それらの吐き出す シュワシュワという音を
抱きながら眠ろう
もう一夜 もう二夜
とぎれることをおそれないように
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