『美しき青きドナウ』の調べに乗せて2010 晩夏/salco
 
弱い産声が船内に響き渡る。日常からの脱出、定住地からの逃避である旅が
大気圏外を指す場合、それは突出というより人類存続の危機をも視野に入れた決死行であり、地球帰還を前提と
しない、果てなき流浪を意味する。しかし当面の問題は、その頭蓋である。
成人さえ三点倒立状態と等しく顔がパンパンに浮腫む無重力空間では、乳幼児の開いた大泉門・小泉門から硬膜
ごと脳がヘルニア状に脱出してしまい、そこに何かが接触して脳が傷つく恐れがある。かと言って頭骨と脳の成
長の為には縫合*するわけに行かない。頭部に適度な圧を与えつつ保護するヘルメットが必要となる。ウレタンの
ように弾性がありメッシュのように通気性がよ
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