ジュリエットには甘いもの 後編/(罧原堤)
 
立てていた中指を舐めながら、軽トラの後ろにとっさに回り、力いっぱい押し戻そうとしている中を、農夫はドアを開け、運転席に座り、エンジンをかけ、アクセルを強烈に踏み込もうと、……その前に、深い深呼吸を始めだしていた。

   21  ダディが及ぼした功罪

 襤褸を纏った長髪の男が歩いていた。日差しを浴びた彼の髪の毛が金色に輝いている。髪を染めていたのですね。
 しかし、髭が黒い。
 この男本来の毛の色は黒い色で間違いないだろう。ただ、それさえも疑ってかからなければならない世界なのだ。もしかすると彼の髪の色こそ彼本来の毛の色であって、髭を黒く染めているのかもしれないのである。いや、ことに
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