バイク/雪乃
バイク
頭の後ろでバイクが走りだす音を聴いた
静かに聞き流し自室へと歩いた
少し経って、今更ながら
不覚にも
あぁ、帰ってしまったのか
と、小さく頭の片隅で呟いた
振り向く事は無いけれど
戻って来る事は無いけれど
立ち止まる事は無いけれど
まだ行か無いで欲しかった
もう少しだけ、その場に留まっていて?
去り行くエンジン音は少し早足で
立ち止まらない足音は
戻らない事を知って居たから
ずっと歩き続けた
振り向いたら、そこにはただのアスファルトしか
残っては居ないと
知って居たから
だから歩き続けた
立ち止まってしまったら
振り向いてしまったら
バイクに跨った人は
困ったように笑うと知って居たから
だからずっと前を見た
去り行く姿を見送るしか無かったから
別れのシーンを少しでも見ない為に、足を止めずに進み続ける。
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