夕日の残骸/カンチェルスキス
改札を抜けた人びとの足元に散らばった夕日の残骸を
数えきれないうちに死は桝目の地面を漂い始め
人びとは疲れ切った無表情で
詰め込まれた電車の中と何も変わらない
覆ってるものを振り切ることもできず
背中には影精製の大きな穴が開いている
駅の階段を下りて市営の駐輪所まで急ぐ
高架の国道には渋滞で進まない冷凍車や観光バス
排気ガスで黒くなった防音壁と支柱のひび割れ
キオスクの店員が両手であくびを隠す
漂い始めた死は人のいなくなった場所では
生きず
桝目の地面に落ちた夕日の残骸
照り返しの多い
今はもうとりとめもないただの夕日の残骸
緑のニット帽の浮浪者が
フェンスにもたれて
不在の人間に対して激怒している
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