音のない洞窟/吉岡ペペロ
ランチのあとヨシミを会社のビルディングまで送り子供のように素っけなく別れた
東京のよく知らない道をヨシミに教えてもらったとおりシンゴは帰った
歩きながら会社からのメールを覗いた
むかし夏の日のさなか、ケイタイのディスプレーは真っ黒になってしまって見えなかった
いまじゃ虹色がかったメタリック系の液晶に文字がちゃんと映っている
ほどけた風が吹いている
ひと月まえヨシミと再会した公園のベンチが見えて来た
木漏れ日がまだつよい
夏の終わりの木々たちがセミの声で鳴いている
へえ、ここにつながるんだ、
シンゴは発見をひとつ喜びそこに腰かけた
きのう夜ヨシミの部屋で聞いた話
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