リトルナゴヤとカブトムシーズの冒険-1/水町綜助
ない
こんな経験はよくあるのではないだろうか
旅先の朝、夜に酒を飲み
語らった一人のことをどうしても思い出せない
居合わせたものにその存在のことを話すが
そんな者はもとよりいない
ロックバンドカブトムシーズは、歌こそ歌えぬものの
夜毎ステージに4匹が漂然と立つことでその言い知れぬ不在感を表現する
立つとは言ったが
もちろん這いつくばってのことだ
マ氏はそんなぼくの述懐をよそに
カブトムシーズの1匹を抱え込み
その羽に何かを書き込んでいる
見ると黄色の枠に赤い文字でハレクリシュナと走り書きされている
広告屋の性分か、ちょっとしたスペースを見つけると宣伝文句を書き込まず
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