おねむのまほう/salco
 
1ぴき棲んでおり、
海を夢みて泳いでいるが
緑のお目目はそれを知らない
ゆっくりゆっくり瞑ってしまう
(青や瑠璃のをさかなや紫のをさかな、
黄色いをさかなのいるねこもある)
それでも時々自分の中のをさかなを感じると
しっぽがひとりでに動くのだ


うちの小さな三毛猫は、深窓のお嬢を
14年
いや、お嬢というにはひ弱過ぎ
生れも育ちもバッチンガムのお姫様を
14年
都合千四百五十六年やっている

 あたしはそんな風だって、頭をひと振りするだけで
 お耳の遠くをさんかくの蛾が飛ぶだけで
 ライオンちゃんに早変わりよ
 世界一精悍で、残忍無比の王様の、
 むごたらしい牙の祭典をするんだわ

と言いたげに
今やぐっすり眠っているので
ねこを見てると眠くなる
ねこの小さな頭の中の
誰も知らない夢の中で
私も溶けてしまうのだ
ねむねむねむねむおねむのまほう

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